留学等で海外渡航中、仮に新型コロナに感染して隔離されたり、入院したりした場合に保険の取り扱いはどうなるのか、これまでの病気 と の 保険上の 違いは何か、について 基本的な考え方をお話します。
1. 保険の対象 :治療費用について
海外旅行保険は、一般的に病気になったとき、入院、通院にかかわらず 医療費等をすべて支払うといわれています。
ほぼ、そうなのですが詳しくは、一定の期間内に「 発病 」し、医師の 治療を必要とするもので、医師の診断による 原因の発生、発病の時期等の要件を満たすものが対象となります。
2. 新型コロナ( COVID19 )と一般的な感染症とどう違うか。
保険約款では、一般的に感染症を例にとると、ウイルス や細菌等が体内に入った段階は感染といわれますが 、感染した ウイルス や細菌等が増殖して発熱や下痢等症状が出て医師の治療を要した段階を 「 発病 」 と考えています。 インフルエンザ等では、発熱した後に ウイルス が 排出 され、感染拡大するといわれています。ところが、新型コロナは、感染して症状がなく本人が気づかない段階から ウイルス が排出されて他に感染 するため 、症状がなく ても 医師の治療が必要となる前から 隔離が必要となります。
3. 保険の想定する発病と 治療費用の 課題
感染していても無症状で医師の治療を必要としない状態は、保険約款の想定する 発病ではなく、保険金支払いの対象にならない ことになります。 悪化して発病し、 医師の治療を必要とした段階で 、医師の診断した 発病日以降の治療費用等について 保険金支払いが開始されることになります。例えば、症状が無く、悪化することもなく、医師の治療を受けることなく 一定の期間が経過し、PCR 検査で陰性になると、検査や隔離に要した費用が 保険から支払われないことが考えられます。他方、悪化して医師の治療を要する状態になり、入院通院に関わらず医師の治療を受けた場合 には保険から費用が支払われることになります。
わかりやすく、例を挙げて説明をすると、
①中国を想定した例:
留学中に滞在先の都市で若干名の新型コロナ
陽性患者が出た場合に、地方政府による住民全員の PCR 検査が 強制的に 行われ ます。そこで陽性となったら強制隔離の対象となります が、この段階までは医師の治療を必要としていない 、つまり保険が想定する支払い要件の発病には達していないことにな ります。
その後、悪化して発熱、咳、等が出て、医師の治療が必要となった段階で、医師の診断した発病日以降の治療に必要な費用は保険から支払われることになります 。いずれの場合でも、責任期間中に原因が あり、医師の治療を受ける必要があったか 、無かったかだけの違いで支払い対象となったり、ならなかったりが発生 します。
②米国・カナダを想定した例:
帰国のための航空機搭乗前 PCR 検査で陽性になった場合、自宅で 14 日間の隔離を命じられ ます 。この時すでにホームステイの契約が終了していたら、ホテルで自主隔離をする以外方法は ありません 。このまま発熱、咳等症状がなく、医師の治療を必要としないで 、14 日後の PCR 検査で陰性になったら、このホテル宿泊料や食事代は、保険の支払い対象とはなりません 。逆にこの期間中に発病し、医師の治療を受けた場合には、支払われる ことにな ります。
4. 救援者費用の課題
留学生が現地で新型コロナに感染発病し、3 日以上入院した場合に は 保険から救援者費用が 支払い の 対象とな ります。ここで 通常の疾病と異なる課題が考えられます。
①救援渡航した親族が、現地到着直後 14 日間の隔離を求められた場合、保険で支払われる宿泊費は 14 日分であり、この間に発 生した 救援者費用を支払い対象としているが、隔離中に保険で 支払う宿泊費は終了してしまうこと、並びに隔離中に保険で支払われる予定の各種 費用の支払対象期間が終了してしまうことが考えられ ます。
②米国・ カナダを例にとると、患者が現地で死亡すると、現地の規則で患者の遺体 を日本へ搬送することは認められ ません。このため、現地で埋葬するか、火葬にするしか方法はなくなります 。この状況は、費用の問題ではありませんが死亡した患者の親族から緊急対策本部に対し、予めの説明がない等の不満を訴えられる可能性があります。
まとめ
これから海外留学プログラムを実施される場合に、学生・保護者に対する説明の中に、新型コロナ特有の課題についても言及されることをお勧めします。
これらの問題は、現在各保険会社により、その判断と対応を検討されておりますので、ご契約の保険契約の取り扱いについて、事前にご確認頂くと良いでしょう。
以上
(文責 : 酒井 悦嗣 JCSOS アドバイザリーボード)