コロナ禍の留学事情を海外大学関係者に聞く【シアトル編】 | JCSOS 海外留学生安全対策協議会|教職員向け

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危機管理コラム

コロナ禍の留学事情を海外大学関係者に聞く【シアトル編】

新型コロナウイルスの世界的感染拡大のため、海外渡航が制限され、国際交流プログラムの多くは中止を余儀なくされました。まだまだコロナ以前の状況にはもどっていませんが、文部科学省から『日本人学生の海外留学について(周知)』の発表を契機に、中・長期留学(3ヶ月以上の留学)を中心に海外派遣留学を再開する大学が増えてきています。JCSOSが派遣を再開した会員校の状況を見る限り(本日現在)、最も多い派遣先はアメリカです。このような状況からアメリカの大学で国際交流に従事されているCascadia College International Programsのディレクターである笠 由可里(リュウ ユカリ)さんにコロナ禍の米国・シアトル周辺地域の生活の様子、そして留学事情についてお話をお聞きいたしました。

日常生活についてーワクチン接種率、マスク着用の義務、医療状況・・・

JCSOS:シアトル周辺地域の現状はいかがでしょうか?
笠さん(以下敬称略):今年の春以降、ワクチン接種が可能になり、シアトル都市圏では人口の7割程度が接種終了していると言われています[i]。昨年3月にパンデミックが始まって以来1年以上、飲食店の店内での全面飲食禁止や人数制限、映画館・博物館・美術館などの施設もずっと閉館の状態が続いていました。スーパーや小売業も人数制限して営業していた時期もありましたが、今年の7月から通常の経済活動の再開が許可されています。人々の雰囲気としては、屋内ではマスク着用をしながら、だいぶコロナ禍以前の状態に戻ってきているという印象です。多くの企業で可能な限り在宅勤務になっていますが、今年の年末まで継続が決定しているところも多いようです。

JCSOS:コロナ感染拡大が始まったときから現在まで、日常生活において、どのような変化がありましたか?
笠:シアトル近辺は、アメリカ国内でもコロナの感染者や集団感染が最初に見つかったことにより、2020年の3月に全米の中でも最初に企業や学校がリモートにシフトしました。社会全体で可能な限り在宅勤務に切り替わったわけですが、突然だったため、リモートインフラを整えるまでは混乱を極めました。当初はスーパーへ買い物に行くにも、マスクに使い捨て手袋を使用、人数制限で店外に長蛇の列が出来ていたり、棚から紙製品や粉物・米や保存食が消えたこともありましたが、すぐに日用品や食料品の流通は正常に戻りました。

ワクチン接種が一般に出回ってきた2021年の春までの1年の間は、とにかく外出時はマスク着用、人と人との間を2メートル開けるソーシャルディスタンスの徹底、同居家族以外との集会・飲食も不可という厳しい州政府の指示で、巣ごもり生活で、娯楽らしいことは何も出来ない状況でした。今年に入り、感染者の数が減るに従い、5人以内の集会なら可能というように少しずつ指示が緩和された後の、7月からの全面的経済活動再開です。

JCSOS:シアトル周辺の医療状況はいかがでしょうか?
笠:パンデミックが始まった当初は、シアトルは国内初の集団感染が近辺で見つかったこともあり、医療状況もひっ迫しており、緊急でない手術などは延期されていました。現在では、コロナの検査はいつでも誰でも無料で受けられるシステムになっていますので、感染が疑われる場合は、検査を受けて、無症状・軽症の場合は自宅療養ですが、具合が悪くなったらすぐに病院へ入れると思います。

ワクチンの接種は、202012月からはじまり、4月から16才以上[ii]、5月には対象範囲が12才以上まで広がりました[iii]。現在では、12才以上の州住民の7割程度(67%)がワクチン接種済み[iv]と聞いています。名前とIDさえあれば、誰でも(外国人でも)病院・ドラッグストアで接種することができます。

JCSOS:マスクの着用義務は?マスクや除菌シートなど、どこで買えますか?
笠:公共交通機関や学校、病院、公共施設ではずっとマスク着用義務が継続しています。デルタ株の影響で、つい先日、その他の一般の施設でも屋内マスク着用が再び義務化されました。マスクや除菌シートは、普通のスーパーや薬局などで購入出来ます。布製マスクだと一枚US$5~10、使い捨てマスクは一箱でUS$1020程度ですが、枚数や値段はまちまちです。アメリカでは基本的には鼻と口がきちんと覆われていれば良いので、布製マスクをしている人も多いです。

大学生活についてーワクチン接種義務、授業形態(対面式/リモート)・・・

JCSOS:秋学期から授業を再開する大学が多くあるようですが、御校はいかがでしょうか?
笠:9月末から秋学期が始まります。開講される秋学期のクラスのうち、43%が対面で、残りは引き続きオンラインです。WHOで認可されたワクチン接種の義務付けも決まっており、ワシントン州の指示により、1018日までに教職員と学生の接種が終了している必要があります。海外からオンラインで授業を取っている留学生、正当な医療的・宗教的な理由により接種が不可能な学生には免除枠があります。またキャンパス内では、秋学期中はマスク着用が義務化され、現時点では、キャンパス内での飲食にも制限があり、指定された場所でしか飲食は出来ないことになっています。対面授業の再開により、大学施設や学生支援オフィス等もこの秋から対面で再開、対面とリモート両方でのサービスを行います。

JCSOS:大学の授業・留学生の状況はいかがでしょうか?
笠:20203月中旬より現在までリモート授業、リモート勤務が継続しています。私の勤務校はクオーター制なので、これまでの6学期間、一部の対面授業を除いて全てオンライン授業と、学生支援サービスも全てオンラインで行って来ました。パンデミックが始まってリモートに切り替わって以来、母国へ帰国してそこから授業を受けている留学生、こちらにそのまま残った学生が半々です。新入生の数は随分減りました。オンラインで始めることを厭わない留学生は、この18か月の間に海外からオンラインで授業を取り始めましたが、対面で始めたい留学生はこの秋まで待機状態だったと思います。またコロナ感染拡大がはじまったときに在学していた日本人留学生の多くは帰国して、そこからオンライン授業を取っていました。今年の秋から、半分程対面授業が再開されるにあたり、渡米してくる日本人留学生が増えています。

JCSOS:今後、アメリカへ留学する学生、学生を派遣しようとしている教職員の方に対してのアドバイスをお願いします。
笠:アメリカの場所にもよりますが、シアトル近辺ではワクチン接種が出来なかった時期は、マスク着用と徹底した2メートルのソーシャルディスタンスが行われていました。人と人が会うことが非常に憚られていて、冠婚葬祭も出来ない、家族以外とはずっと会えない、小学校から大学まで学校も全てリモートという状態でした。日本のメディアを通しての印象ですが、日本では非常事態宣言中でも友人と飲食店での食事が可能だったり、満員電車が普通に走っていたりして、緩いなというのが率直な印象です。ワクチン接種もある程度は進んだアメリカですが、今後の変異株次第ではどのように社会が動くかはわかりません。従って、日本から来る留学生も、パンデミックが収束しない間は、今後も強制力のある行動制限がなされる可能性があること、そしてそれは日本の状況とは異なったものになること、コロナ禍中ならではの柔軟に対応する心構えを持って、渡米してほしいと思います。

[i] [iv]Washington State Department of Health (2021) “COVID-19 Data Dashboard”→リンク先はコチラ
[ii] Washington State Department of Health(2021)”Eligibility expands to everyone 16 and older in Washington state.→リンク先はコチラ
[iii] Washington State Department of Health(2021“Everyone 12 and older now eligible for Pfizer-BioNTech COVID-19 vaccine”→リンク先はコチラ

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ワクチン接種が世界各国で実施されるようになりましたが、依然として予断を許さない状況は続いています。このような状況の中では、日常的に最新情報を収集し、柔軟な対応ができるように留学に備えることをお勧めいたします。

*この記事およびCascadia Collegeに関するお問い合わせはJCSOS事務局(TEL:03-6418-0717、 E-mail:info@jcsos.org)までお願いいたします。

笠 由可里(リュウ ユカリ)Cascadia College International Programs ディレクター

経歴: 2003年より、University of Montana(モンタナ州)、 Seattle Central College(ワシントン州)の国際課に勤務。2011年より Cascadia College(ワシントン州)勤務、2017年より現職。日米の大学を卒業した自らの学生経験と、複数の大学での国際課職員としての勤務経験を元に、一人ひとりの学生さんの目標や人生設計に寄り添う丁寧な留学案内・アドバイスを心掛けている。専門は、国際教育、学生ビザに関する米国移民法、在米留学生の学業・進学・生活支援。University of Montana(言語学修士)。熊本県出身。

Cascadia College:アメリカ北西部ワシントン州、シアトル近郊の州立二年制大学(コミュニティカレッジ)。四年制大学編入に特化した小規模の二年制大学で、総学生数は約2,500名、留学生数は約120名。大学編入プログラム・ESL英語プログラム・高校卒業プログラム・短期研修旅行プログラムがある。学生は一般教養の二年を本学で終了し、全米の四年制大学の三年次編入が可能。キャンパスは全米でも珍しい四年制大学(University of Washington Bothell)との共同立地で、モダンで美しく最新設備が整っている。留学生の半数は名門University of Washingtonへ進学、残りは全米の大学への進学実績がある。最低3か月からの留学が可能。