【フランス】抗議活動
事実の概要:
6月27日、フランスのパリ郊外ナンテールで、アルジェリア人の17歳の少年が、交通検問中の警察官に銃で撃たれ死亡する事件が発生した。当局は少年が停止命令に従わなかったとしているが、発砲した警官は殺人容疑で取り調べを受けているという。現地では抗議者らが警察に花火を投げつけ、車に火を放つなど混沌とした状況となった。6月27日夜にはパリ郊外の町、マント・ラ・ジョリーの役場がデモ隊により放火されたという。
これに対し、マクロン大統領は28日、警察の銃撃は「正当性がなく容認できない」と批判していることが報道されているが、事件直後の大統領のコメントとしては珍しい。
6月29日、フランス各地でこれに抗議するデモが発生している。6月28日、デモの拡大を受けてフランス政府は、パリやその他の大都市周辺での警備を強化すると発表。同国内務省によると、この騒乱で31人が逮捕され、25人の警官が負傷、車40台が燃やされたという。抗議デモが3日目に入って少年を追悼するデモ行進に参加していた集団の一部が暴徒化して機動隊と衝突し、マクロン大統領は上級閣僚と危機管理会議で対応を協議し、内相は鎮圧のため、全土で前日の約4倍に当たる警官4万人を配備すると発表したと報道されている。
現地情報では、抗議行動は29日、3日目の夜を迎え、リールとマルセイユでは複数のデモ参加者が逮捕された。
事件が発生したパリ郊外ナンテールでは、銀行が入るビルの1階で大規模な火災が起きた。
ソーシャルメディア上の動画や画像では、複数の場所でごみの山が燃えているように見える。
パリとその近郊ではさらなる暴力行為に備えて、29日午後9時からバスと路面電車の運行が停止された。郊外の一部地域では夜間外出禁止令が発令された。
リールやトゥールでも公共交通サービスの運行が停止された。
27日と28日の夜には複数の都市で暴動が起き、車や建物が被害を受けた。
フランス全土に約4万人の警官が配備されている。
ジェラール・ダルマナン内相は、28日夜だけで警官170人が負傷したと発表した。
内務省によると、28日から29日未明までに、フランス全土で少なくとも421人が逮捕された。そのうち242人はパリ大都市圏で逮捕されたと、地元紙ル・フィガロは報じている。
逮捕者の大半は14歳から18歳である。
事態の今後について:
その後、少年が殺害された瞬間の映像が公開され、フランス全土に衝撃を与え、低所得者用公営団地や貧困地域に住む若者と警官の間に長年くすぶり続けていた緊張をあおる結果となったという。少なくとも今後沈静化までに長時間を要する前提で考える必要があり、また、難民流入による社会の分断等の問題と結びついて拡大する可能性も否定できないと考える。
<ワンポイント・アドバイス>
フランスに学生を送っている学校の派遣部署から学生に向けて、日に一度の現地状況報告を促すと共に、日本のマスコミ報道の内容を伝えるとともに、次のアドバイスをお伝え頂くようお勧めします。
留学生は、現時点では、段階的レベルを考えて以下の対応を準備されたい。
① 現段階では、食料・飲料水・日用品を備蓄して一定期間外出できない状態に対応する
② 通学のルートを複数(4から5通り)準備して、デモ等に巻き込まれないようにする
③ 現地大学の最新の現状評価と対応指示を確認し、そのリスク回避策に準ずる
③ 旅レジ・在留届を確認して最新の領事館情報を入手する。
④ 通学が難しくなる場合には在宅で経過を見る。その段階で隣国または日本への一時退避策も検討し、必要あれば航空券等の手配も行う
⑤ 非常持ち出し(緊急脱出)の準備をする
以上
ご注意
危機管理情報は株式会社日本リスクマネージメントより情報提供を受けています。転載・転用・編集はご遠慮いただきますようお願いいたします。