COVID19ワクチン接種に関する指導の方向性について | JCSOS 海外留学生安全対策協議会|教職員向け

ゲスト様

危機管理コラム

COVID19ワクチン接種に関する指導の方向性について

COVID19ワクチン接種に関する指導の方向性について

JCSOSアドバイザリーボード 酒井 悦嗣

これまでは、留学希望者に対しCOVID19ワクチンの3回接種を必須として指導されていた例が多かったと思いますが、58日の感染症分類の変更等により、指導方針について改めて検討されているかと思いますので、関連情報を提供します。

 

WHOでは、今後のワクチン接種について、高リスク、中リスク、低リスクの3種に分けたうえで、高リスク以外は必ずしも接種を必要としないとしています。

令和5年1月 27 日厚生科学審議会感染症部会の決定を踏まえ、オミクロン株とは大きく病原性が異なる変異株が出現するなどの特段 の事情が生じない限り、5月8日から新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)について、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成 10 年法律第 114 号。以下「感染症法」とい う。)上の新型インフルエンザ等感染症に該当しないものとし、5 類感染症に位置づけるとしています。

 

317日にWHOは、新型コロナウイルス感染症の脅威は今年中にインフルエンザ並みに落ち着く可能性があるとの見解を示していました。また、現地時間46日(日本時間7日)には、WHOのテドロス事務局長は新型コロナウイルス感染拡大をめぐる緊急事態宣言を、年内に解除する見通しである旨を発表しました。ただし具体的な時期は明らかにしておらず、5月にパンデミックに関する専門家委員会が開かれる予定とのことです。

 また、新型コロナウイルスワクチンに関してのWHOの勧告ですが、3つのグループに分けています。最優先すべき高齢者・基礎疾患のある人・免疫不全の人・妊婦・医療従事者は定期接種を推奨するとしました。次に、中程度のグループは「60歳未満の健康な成人および、基礎疾患のある子ども」で、通常接種2回を完了した後の追加接種につき、1回までを推奨するとしています。2回目以上の追加接種については、公衆衛生上の有益性はわずかだとして「推奨しない」としました。最後に、優先度が最も低い「健康な子どもや若年者」については、最初の2回の接種および、追加接種とも安全かつ有効だが、重症化しにくい点を考慮すると、公衆衛生政策の優先度や費用など各国の判断に委ねるとしました。

 最後の優先度が低いグループに関しての勧告ですが、これは発展途上国や衛生状態が悪い国・地域では、新型コロナウイルス感染症よりも死亡率や重症化率が高い病気のリスクが高かったり、貧困国のためにそもそもワクチンを国民分購入する予算がなかったり、流通段階におけるコールドチェーンを維持できないなど、ワクチンを普及させるためのハードルが高い国・地域のことも含めての全世界に対する勧告となっているため、必ずしもワクチン接種をしなければならないとはいえない、という表現になっているものです。「ワクチン接種は安全かつ有効である」けれども、「公衆衛生政策の優先度や費用など」によって各国の判断に委ねるとしており、ワクチン接種を「不要」としているわけではないことにご留意ください。あくまでも、国・地域の事情で新型コロナウイルスワクチン接種の普及が難しい事情がある場合には、強く勧めるものではない、としているだけです。

 

 先週の海外危機管理情報でもお伝えし、また、日本も新型コロナウイルス感染症が58日に感染症法上の位置付けが変更になるのに伴い、現行の水際対策は終了の予定となっています。

 在タイ日本領事館のHPでは44日付で、『令和558日に予定されている新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴い、58日以降の日本入国に際しては、「出国72時間以内に受けた検査の陰性証明書」、「ワクチン接種証明書(3回)」のいずれも提示が不要となります。ただし、57日までは、タイから日本への入国に際しては、「出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明書」又は「ワクチン接種証明書(3回)」のいずれかの提示が引き続き必要ですので、ご注意ください。』とあります。』

 

まとめ

先進国を中心に、多くの国で水際対策としてのワクチン接種要件が撤廃される流れにあることから、留学生に対しワクチン接種を「強制」することは再考を要する段階となり、今後は渡航先国での制限がない限り、ワクチン接種を強制とせず「推奨」または「強く推奨」にとどめるという方向が適切なご指導になると考えます。なお、現実的には渡航先の条件に合わせることが必要になると思いますので、ワクチン接種を入国要件とする国・地域への渡航はこれまで通り必須とすることも問題ないと思います。

因みに、ワクチンは重症化予防に極めて有効であることが、多くの感染した留学生の事例から見られています。学生さんの健康と安全を守る観点から、(主治医から止められている場合等を除き)ワクチン接種を強く推奨、或いは推奨されることは適切と考えます。

 なお、接種をせずに渡航して団体行動に制限が発生したり、重症化したりした場合には、大学の支援活動が制限されることも想定されること、また接種の有無にかかわらず、現地で新型コロナウイルスに感染し、万が一重症化した場合や後遺症が残る等しても、それらは大学の責任ではないことは明確にしておかれることをお勧めいたします。

以上ご検討ください。