コロナ禍の留学事情を海外大学関係者に聞く【ハワイ編】② | JCSOS 海外留学生安全対策協議会|教職員向け

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危機管理コラム

コロナ禍の留学事情を海外大学関係者に聞く【ハワイ編】②

Ⅱ.大学への影響

入学者数がここ数年で最多 

JCSOS:コロナが感染拡大による大学生活への影響はありましたか?
カーマン:2021-2022は、過去14年の中で一番入学者数が多く、ハワイ大学全体では国内・留学生数両方が増えました。いろいろな理由があると思いますが、出来るだけ安全な場所で学生生活を送りたい、そこで比較的早くコロナ感染を抑えることができたハワイの株が上がったこともあるのではないかと思います。ハワイ州知事のイゲさんが良い意味で慎重な方で、州のコロナ対策を丁寧に説明されています。そのおかげで、ハワイ大学も安心して任せられる環境という印象が持たれたのかとも思います。また去年に関して言えば、アメリカのほんとんどの大学でオンライン授業が行われたため、アメリカ本土の大学に進学予定だったハワイ出身の学生がハワイ大学に来たということもあります。

授業形態の変化と選択

JCSOS:日常的にキャンパスや教室で講じられている感染対策はありますか?
カーマン:20203月下旬あたりからアメリカでもコロナ感染者数が増え、ハワイ大学でも教職員はリモートワークになり、授業もオンラインに切り替わり、その状態が今年の夏まで続いていました。2021年春からワクチン接種が始まったことを受け、夏から少しずつ対面式授業を増やし、秋セメスターから半分程度は対面授業にする予定でしたが、デルタ株などの影響で感染者数が激増したため、結果的にオンライン授業が予定よりずっと増えました。
ハワイ大学全体の授業では、対面とオンラインの他、今秋は新しく HOT (Here-Or-There) という、いわゆるハイブリッド形式を導入しています。HOTは一つのクラスを対面式とオンライン式の2つの形式で参加できるようにするもので、例えば、ワクチン接種済みの学生は対面式の授業に登録する一方、宗教上や健康上の理由でワクチン接種が済んでない学生はオンライン式の授業に登録します。また、曜日違いで教室の中で対面で出席する日やオンラインで出席する日があるハイブリッド形式のクラスなど、状況に合わせて、柔軟に運営をしています。なお、対面式の多くは実験のクラスなど、実地でないと運営が難しいクラスです。

JCSOS:個人個人の状況に応じて、授業形態を選択できるということですね。
カーマン:もちろん教員も人によっては「対面で大丈夫」という人もいれば、「健康上の理由からオンラインで授業をしたい」という場合もあります。出来るだけ本人の、それが教員であろうが学生であろうが、個人の意見を尊重して授業が進められるように、大学としては努力していると思います。

ハワイ大学が開発したコロナ対策アプリ『LumiSight』

カーマン:キャンパスに入る際は、学生、教職員、ビジターを問わず、大学が開発したLumiSight[3]というアプリを使用し、チェックインする事が義務付けられています。まずアプリを立ち上げて、質問事項に回答しなければなりません。例えば、熱はあるか?コロナの疑いのある症状はないか?などの健康に関する質問です。全ての質問に対して問題がない場合は、キャンパス内に入ることができます。またワクチン接種証明書やPCR検査の証明書をアプリにアップロードし、キャンパス内で求められたときは、見せる必要があります。例えば、ワクチン接種を終えていない限りキャンパスのカフェテリア内で食事をすることができませんので、入る時に証明書を見せることになります。おそらく、来年の春においても、Lumi Sightの利用は続くと思います。

【具体的な感染対策】
・ソーシャルディスタンス(教室内の人数制限 )
・屋内でのマスク着用義務
・毎日の検温と体調管理
・手の消毒
LumiSightの利用
*情報提供:ハワイ大学マノア校付属集中英語コースNICEプログラム

学内でコロナ感染者がでるとメールが送られてきます。例えば寮に住んでいた人が感染した場合、「(寮で)感染者が出たので隔離をしてもらっています」というような感じです。職員の場合、「感染した本人だけでなく、職場の近い距離で仕事をした同僚も隔離されています」というような情報がメールで流れてきます。ハワイ大学のメールアドレスを使っている人すべてに、このような情報が流れてきます。

ワクチン接種について

JCSOS:ハワイ大学のホームページでも5月17日付で「秋学期にキャンパスで受講する学生はワクチン接種が必須である」[4]と書かれていますね。
カーマン:はい。実は、5月くらいから秋学期に関しては、対面授業に参加する学生(正規の学生、英語集中講座の学生の違いに関わらず、ハワイ大学の授業に参加している人)に対して、ワクチン接種を義務付けるという方向に進んでいたのですが、どのワクチンについてもFDAU.S. Food and Drug Administration/アメリカ食品医薬品局)が完全承認をしていませんでした。そのため、ハワイ大学は今年の秋に関しては、学生寮滞在者にはワクチンを義務づけていますが、授業に関しては、ワクチンを接種していない-例えば健康上、宗教上の理由だけでなく、自分の選択としてワクチンを受けない-という人は、毎週陰性証明を出せば、ワクチン接種義務は免除されています。しかしながら、2021823日にはワクチンを完全承認したので、来年の春学期からは、ワクチン接種しないかぎり、キャンパスに入ることはできません。宗教上又は健康上の理由で受けられない人に関しては、まずその旨免除の申請をして受け入れられれば、毎週陰性結果を提出することでキャンパスに入ることが許されますが、屋内外を問わず常にマスクを着用しなければいけません。

JCSOS:キャンパス内でワクチン接種できますか?
カーマン:今年の秋学期始業直前から、構内にて期間限定でワクチンを打つことができました。秋学期が始まってからも予約をすることなく接種できるクリニックが何回かでていました。しかしながら、このようなクリニックが定期的にキャンパス内で開いているわけではないので、学生自身が薬局や医療機関に行って、接種することが多いのではないかと思います。

JCSOS:ワクチン接種証明書を日本出発前に提出する必要はありますか?
カーマン:現状では、ワクチン証明書の提出を求めてはいませんが、授業開始前にはワクチン接種済みか否か確認します。いずれにしても、118日からアメリカ入国の際にワクチン接種証明書を求められる事になりそうですので、証明できるよう、日本出発前に早めに(接種後2週間経過するまでは接種完了と見なされませんので)準備されることをお勧めします。

コロナ感染の疑いがあった場合・・・

JCSOS:授業出席者の中で、コロナ感染の疑いがある場合の対応を教えていただけますか?
カーマン:基本的に、疑わしいケースは、感染したという前提のもとに対応することになります。例えば、ホームステイ先で具合が悪くなった場合は、キャンパスに来ることはできません。このような場合、検査を受けて、滞在先で待機してもらいます。陰性の場合は問題ありませんが、陽性の場合は、医者の許可がでるまで、キャンパスに来ることはできません。
キャンパス内に感染者が出た場合、感染者と6フィート以内で15分以上過ごしていた人は感染した確率大と見なされ、隔離されます。寮の場合は、感染者本人だけでなく、ルームメートも隔離されることになります。その他、原則24時間以内に消毒をして、まだワクチンが出ていないときは感染者が出た場所が1週間立ち入り禁止になりましたが。現在は消毒後に入れるようになっています。

日本からの留学について

JCSOS:日本人学生や大学に評価の高いNICEプログラムの状況はいかがでしょうか?
カーマン:当国際部で行っているNICEプログラムでは、2021年春(4月)から10週間のプログラムで対面式授業を実施しています。2022年春からは3週間のプログラムでも対面式授業を再開する予定です。キャンパス内で対面式授業に参加する場合、ワクチン接種はファイザーとモデルナの場合は2回、ジョンソンアンドジョンソンの場合は一回必要になります。また、ハワイ州では、現在接種完了後も屋内でのマスク着用が義務付けられています。宗教・健康上の理由でワクチンを受けたくない、受けられない理由がある場合、免除の申請をし、受け付けられれば、毎週陰性証明を提出することになるでしょう。
また日本の大学の方の話しでは、2022年春については大学のプログラムとしては派遣しないが、個人参加であれば許可するという立場をとっている大学もあるようです。

→→→コロナ禍の留学事情を海外大学関係者に聞く【ハワイ編】⓷


[3] Information Technology Services, University of Hawaii System→リンクはこちら
[4] “UH to require COVID-19 vaccination for on-campus students this fall” University of Hawaii News, May 17th,202. →リンクはこちら